DRAGON QUEST6外伝 モンストル英雄伝説10

 

 

 ヒュー…ドサッ!!
空から人と馬と馬車が落ちてきたモンストルの町のはずれ。そう、北の山に理性の種を採りに行っていたロエルたちがルーラで帰ってきたのだ。

彼らは教会のお世話になることなく全員生還して帰ってきた。
行くときは時間が掛かるが、ロエルが覚えているルーラと言う呪文は便利なもので、一度来た町へはこれを唱えるだけで帰ってこれるのだ。
ちょうど朝方で町の皆も活動を活発に始めている頃だった。
約七日振りのモントルの町。住民たちの彼らを見る目線はやはり冷たいものがあったが彼らはそんな事気にしなかった。

彼らがこの町に入って真っ先に向かった先
それは教会でもなく、宿屋でもなく、アモスの家だった。アモスにも、この町の住民にも…もう苦しい思いはさせたくない…

ロエルたちはこの町で起こった出来事を見続けてきてそう思ったのだ。

宿屋の主人の話ではこの種を煎じて飲ませれば、腰部分の傷が完治するとともに常に理性を保っていられるようになると言う。
ロエルたちはどのような方法でアモスに飲ませるかは相当悩んだようだが、ミレーユが作ったシチューの出汁として混ぜ飲ませる作戦のようだ。

ミレーユにとってはとても迷惑なことだが、アモスに怪しまれずに飲んでもらうにはそうするしか方法が無いのだ。
そう、聞く話では理性の種と言うものはとても普通には食べられないほど苦くて、吐き出しそうになるような味らしいのだ。

料理として出せばアモスも怪しむことなく飲んでくれるだろう。


コンコンコン

「どうぞ」
アモスの声が聞こえた。その声を聞き四人はアモス宅に入っていった。
「こんにちは」
アモスが寝ている部屋へと足を進める四人。ロエルたちの顔を見て、当たり前だが少し驚いた様子のアモス。

ロエルたちはもうすでに旅立ったものだと思っていたのでまた彼らと、再開するとは思っていなかったようだ。
「あれ?あなたたちは…もうすでに旅に出られたと思っていましたが…あれ?

でもあなたたちの姿を似た限りでは、なんだか旅には出られた様子ではありますが…」
ロエルたちはすぐにここにやってきたので、魔物につけたれた傷を癒していないので擦り傷打撲だらけだ。
「あははっ…旅には出たんですが、ここから先に居る魔物が強すぎて…ボコボコにやられちゃって…ね?…ね?みんな」
そういったロエルに少し苦笑気味で相槌する三人。
「そうそう!海の魔物が強くってさ!またここに帰ってきたんだ!」
必死で"嘘"を言うハッサン。ここから船で二日ほどで着くアークボルトに行こうとしたと言う事にしているようだ。
「…で、あなたたち?わたしに何か用ですか?旅の方がこう何回もわたしのとことに来るなんて…」
その後ミレーユが、
「実は今日はアモスさんに特製の秘伝の薬草入りの手作りの料理を作って差し上げようかと思って。

アモスさんが早く元気になって貰えたらと思って…町の皆さんもアモスさんが元気になるのを…心待ちにしているみたいですから」
「わたしに?料理を?ああ…旅の方に料理を作って貰えるなんて…おまけにあなたのようなやさしい方に料理を作ってもらえるなんて、

わたしは幸せだ…そうだ、台所お好きに使ってください…わたしは何もできませんが」
そう言うとアモスはそっと目を閉じた。

 台所へと移動する四人。ロエル、ハッサン、チャモロも手伝うようだ。ミレーユは早速理性の種を調理する準備を始めた。
「良かった!作戦成功だねっ!」
「ああ!これで…アモスの苦しみも終わりって訳だ!」
「いや、まだミレーユさんが作った料理を食べるまでは…成功ではありませんよ…

この種、煎じて料理に混ぜたら、どんな味になるか解らないし…」
楽観的な、ロエルやハッサンと違い、やはりチャモロは最後まで考えてるようだ。
「…もしアモスさんが食べなかったらどうしよう?」
「煎じたヤツをお茶かなんかにして飲ませたらいいんじゃねぇか?」
手伝うと言ったものの、その様子が見られないロエルとハッサンをよそにミレーユはどんどん調理を進めてゆく。

そっと横に近づくチャモロ。すでにミレーユは種を煎じていた。
「ぼくも、何かお手伝いしましょうか?…それにしても、これなんだか…独特な香りが…しますね…」
「いいわよチャモロ。ありがとう。あなただけよ、こうやって来てくれるの…そうよね…アモスさんには悪いけど、わたしもこの料理食べたくないわ」
苦笑いしながら手を進めるミレーユ。煎じた種からだしを取るようだ。煎じた種をキノコやほか数種類の野菜が入った、煮立ったスープにつける。

種から濃い緑色の色素が染み出し、独特な香りを放つ液体が完成した。
その匂いを察知し、ロエルとハッサンがやってくる。「うげっ!!なんだよこれ!やべぇ臭いするじゃねぇか!こんなのアモス食ってくれるのか?!

……わ…わりぃ!ミ…ミレーユが心込めて作ったんだから!!食ってくれるよな!」
最初は否定的に言ったがその瞬間ミレーユの冷たい目線を感じ、とっさに言い直すハッサン。ロエルとチャモロも苦笑い気味だ。
「さぁ出来たわよ。理性の種ベース、特製シチュー!」
器の中に入ってるのは深い緑の液体。シチューとはほど遠い。野菜の鮮やかな色だけが目立っていた。

色的に、あまり食をそそるような物ではない。香りも独特のもので、ミレーユはもちろん味見をしていない。

果たしてアモスは食べてくれるのだろうか?と言う疑問を抱きながらアモスの元にそれを運ぶミレーユ。

その様子を見て起き上がり、テーブルへと移動するアモス。
「アモスさん、出来ましたよ。特製の薬草ベースのシチューです」
「ありがとう。くんくん…あれ?何か独特の香りがしますね?なにかとても深い緑のスープですね」
「え…ええ!特製の薬草ですから」
怪しまれないように必死に平常を装う四人。怪しまれ、食べなかったらここまでの苦労が水の泡だ。
少しかき混ぜ、キノコなどとともにスプーンでそれをすくうアモス。
固唾を飲みアモスがそれを口に運ぶ瞬間を見守る四人。

ゴクリ

アモスがそれを口に入れ飲み込んだ。
「うげぇ!!…な…なんだ!!??このシチューは!!…う…ぐぐ…ぅぅぅぅ…ぐるるるぅ…ぐわぁぁぁぁぁ!!!」
シチューを飲み込んだ次の瞬間アモスは頭を掻き毟り、恐ろしい唸り声を上げ始め、体が巨大化し、魔物に変化してしまったのだ。
それはあの日戦ったモンストラーだった。
ロエルたちにとって、理性の種を飲ませたのに、アモスが魔物に変身するなんて思いもよらないことだった。
「きゃっ!!アモスさんが!また魔物に変化しちゃったわ!」
「理性の種…これは…う…嘘だったのか??」
「まずいよ!!ぼくら体力半分も残ってない!」
「うう…アモスさんに攻撃できないし…ぼくたちは…終わりだ!!」
恐怖と絶望に慄く四人。この魔物はアモスなので手を出すわけには行かない。彼らは固まって動けない。
が、その直後、なんと魔物がしゃべったのだ!!
「なーんてね!!あははははっ!!悪かったですね!!あなたたちのこと、だましちゃって」

ボワンッ!

その後魔物はアモスに戻ったのだ。衝撃が走る四人。
「なんかあなたたちの料理を食べたとたんあの魔物になってしまったんですが、その間も自分がやっていることがきちんと把握できています!!

なんだか解りませんが、自由に変身出来るようになったみたいですよ!!そういえば腰の傷の痛みも無くなってます!ああ〜爽快だ!」
少し吹っ切れた感じがするアモス。とにかくアモスの病が治ったようなのでそっと胸を撫で下ろす四人だった。
しかし、その直後アモスの表情がはっとして、何かを思い出したかのようなものになった。
「…わたしは毎晩、あの魔物に変身し町を徘徊し暴れまわっている夢を見ていました。

昼間もあの魔物の呪いの力で、自らの手で…でも今日のあなたたちのおかげで、あれは幻覚ではなく、

わたし自身がやっていたことだったということが、解りました。町の人たちは、それをわたしに一言も言わず…黙っていたんですね。

そう思えば、わたしはどれだけ町の人たちに迷惑をかけていたのか…」
そう言うとアモスはそっと玄関のドアの方向へ向いた。
声を掛けたいが、どう声をかければ良いのかわからない四人。

しばらく経った後、アモスは何かを決心したかのような表情でロエルたちの方向に向きなおした。
「ロエル…くん…でしたね。わたしも…わたしも、あなたたちの旅にご同行したい。

人々に迷惑をかけていた、この力をあなたたちの旅のお役に立てられれば…無理は言いません。

生まれ育ったこの町から離れ、友人たちと離れるのはつらいし、この町に居ればたくさんの人々に囲まれ、平和に暮らせるでしょう。

でもそれでは…駄目だと思うんです。わたしの力でも必要とする人が居るなら、役立てたいのです!」
アモスの言葉に打たれたのか、まじめな表情の四人。彼らに、アモスを断る理由なんて無かった。

まじめな表情をしていた四人が急に笑顔に変わった。
「アモスさん。ぼくたちも仲間はたくさん居れば心強いです。おまけにアモスさんは、村一番の戦士だし、

ぼくたちもアモスさんから色々戦いについて教えてもらいたいです。これからもよろしくお願いします」
手を差し出すロエル。がっちりと握手を交わす二人。
「俺はハッサン!よろしくな!」
「わたしはミレーユです。本当は料理には自信あるので、今度はおいしいのをご馳走します」
「ぼくはチャモロです。ああ、なんか心強い方が仲間になってよかったです」
その後他三人とも同じく握手を交わし、ロエルたちのパーティに新しくアモスが仲間に加わった瞬間だった。

 

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