DRAGON QUEST6外伝 モンストル英雄伝説11(最終話)

 

 

 ロエルたちは翌朝モンストルの町を出発すると言う。彼らは宿屋に行く直前アモスに、彼に飲ませた理性の種について説明した。
ロエルはスコットにアモスの病が治ったということを伝えに行くと言ったが、アモスがそれは自分で伝えるといった。
「じゃあ、明日鐘が朝の時を告げる頃に、教会の前で!」
そう言うと彼らは宿屋へと向かっていった。
アモスにこの町から出て、平穏な毎日から離れることについて悔いは無かった。

確かに今まで、仲の良い人たちと遠く離れ、旅をするのはつらいことだ。

でも彼にとって、この町で平和に暮らすより、多少危険が待ち受けているであろう旅をし、自分の住んでいた町だけでなく、もっと広い場所

世界を旅し、この町を救った、その小さな力でも役立てばと思ったのだ。

そして、平穏に暮らしている毎日では、きっと自分は"英雄"と言う名に溺れてしまいうであろう…自分のためでもある旅立ちの決意であった。
 彼はある人物の家へと向かっていた。スコットの家だ。一番近くに居て、一番長い時間を過ごして来たであろう彼に、

傷と魔物になる病が治ったこと、明日の朝この町を旅立つということを伝えるために。
彼に迷いは無かった。足取りに重さは感じられなかった。
家族のような仲なので、ノック無しにスコットの家に入るアモス。今日は武器屋の仕事は休みなので、昼食の準備をしている。

そっと近づき、満面の笑みでスコットの肩を叩く。
「ん…!?アモス?…お、おまえ!!大丈夫なのか?」
「ああ!理性の種を飲んだからねっ!」
「そうか…!あの子達が帰ってきたんだな!」
「あれとんでもない味だったよ。まぁ元の体に戻れたことの代わりとしては小さい苦しみだっただけどね」
スコットは、火を炊いていて昼食を作っていたこと自体忘れてしまうほどの喜びを感じた。魔物と戦う前の明るくって、勢いのあるアモス

。とても長く感じたこの1ヶ月間のつらかった日々は、アモスの笑顔で一気に塗り替えられた。
「ついでだから食べていかないかい?アモスに作った飯もあるからさ!」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
昼食が終わった後、アモスは、理性の種を飲んだことにより、自分が毎晩魔物に変身していたということを知ったとスコットに言った。

それを聞いたスコットは「おまえを傷つけたくなかったから」と言った。しかしアモスは最初はショックを受けたが、今は大丈夫だということを伝えた。

その後彼にこの町を明日の朝に旅立つということと、その理由を話し始めた。
「…アモス、そのことは本当なのかい?」
「ああ…わたしはもう決めたんだ。きみや今までわたしを支えてくれた人たち…みんなと別れるのはつらい。

もしかしたらわたしが魔物に変身していたことを知って、逃げたと取る人もいるかもしれない。

でも…この町を救うことができたわたしのこの小さな力でも…役に立てたら…いいなと思ったんだ!」
「…ふふっ…やっぱりおまえらしいな…モンストラーと戦うときもそんな感じだった。

安心しろ、俺は止めないぜ。止めたって、聞くヤツじゃないのは知ってるからな」
笑顔のスコット。しかしその目は少し悲しそうだった。そして彼はあの日交わした約束を果たすべく言葉を話した。
「アモス、覚えてるか?モンストラーがやってく前の日くらいに、飲む約束したこと!」
「ああ、覚えてるさ。わたしが病で倒れていたから、ずっと飲めなかったんだね」
「今日こそは、約束守ってもらうぞ!」
「もちろんさ!でも明日の朝早いから、ほどほどに!」
「解ってるさ!きつい酒ほどほどってことで!」
「おいおい…待ってくれよ!!」
久しぶりに笑い会う二人。昼間から町の酒場に行き、アモス自身もほどほどと言ってはいたが、

今まで飲めなかった分、大量の酒を飲み干してしまったようだ。酒場にはアモスを知るたくさんの人も自然に集まってきて、

町の英雄の復活を喜び、そして別れを惜しんだ。中には泣き出す住民まで現れ、少しもらい泣きするアモスであった。
その後、スコットと二人で、何時間にもわたって思い出話をし続けていた。それは夜更けまで続いた。

 夜も更け、真っ暗になったモンストル。二人は別れ、それぞれの家へと向かっていった。

酒のせいか、アモスは床に就いたとたん、眠ってしまった。もう魔物に変身する心配は無い。

そしてこの日以来、モンストルの町での毎晩の地震は起きなくなった。

朝の光がまぶしい。その光でアモスは目を開ける。彼らとの待ち合わせの時間よりもまだ時間が早かった。

外に出て井戸から水を汲み顔を洗う。こんなにすがすがしい朝は幾日ぶりだろうか。と、横に愛犬が少し寂しそうにクンクン鳴いてきた。
「…きみともしばらく会えないな。そうだ、お隣さんが預かってくれるって昨日言ってくれたんだっけ?

あはは…駄目だな…わたしは…すっかり昨日の記憶が飛んでしまっている」
朝食を食べ、旅に持っていく荷物などを準備し装備を整えた。その後犬を預け、教会のほうへと向かった。

すでに黄色の帽子をかぶった少年チャモロと、モヒカン頭のハッサンが立っていた。
チャモロが気づき声をかける。
「あ!アモスさんだ!おはようございます」
元気に手を振るチャモロ。
「おっ!アモッさんの登場だ!」
「やぁ!あれ?後の二人は?」
「はは…ミレーユさんは準備が大変で…ロエルさんは寝坊です…いつものことですが…

アモスさんが加わって初日だからきちんと起きてくれると思ったのに…」
そんなことを言ってると二人が現れた。
「おい〜お前ら!アモス、チャモロ、俺が待ってるのに遅いぞ…」
ほぼ毎日のことなので少し呆れ気味で言うハッサン。
「ごめんなさい…」
声をそろえて言う二人。
「全員そろったことだし、そろそろ行きましょうか?バーバラさんも待ってることでしょうし」
「そうだな!」
彼らは教会にお祈りに向かう。きょうは珍しく中では神父が立っていた。
「わが町の英雄アモス、そして世界を救いし勇者ロエルたちの旅に、神のご加護があらんことを」
ロエルたちはその後すぐに教会から出て行ってしまったが、アモスだけが引き止められた。
「あ、そうだアモスさん、お一つお渡ししたいものがあるんですが?」
「え?わたしに?」
「昨日スコットさんから預かったものなんですが、これです」
そう言うと奥のほうから何か重そうな剣らしきものを運んできた。
「破邪の剣と言う武器らしいです。一つしかなくて申し訳ないが、旅をする方たちと相談して使い分けてくれとのことです」
「ありがとう、神父さん…わたしがとても感謝していたと、彼に伝えてください。

わたしにはもう彼に会いに行く時間が無いので…そして、今までお世話になりましたね。あなたは世界一の神父さんです」
「いやぁ…照れますよ…またあなたに会える日を楽しみにしていますよ」
神父は笑顔でアモスを送り出し、アモスは神父に軽く手を振り、教会を後にしようとした。

と、そこに一人の若い町娘がアモスに近寄ってきた。全く面識が無かったが、不思議と心臓が少しドキッとする。
「…!?あ…あなたは?」
「アモスさん…初めましてと言っても良いでしょう…アモスさんが…モンストラーとの戦いのときから…あなたのことを、遠くから見ていました。

そしてあの日からあなたの病が治るように、ここで毎日、お祈りをしていました。

旅に出られる前にここに立ち寄ったと聞き今日ここには

アモスさんに、わたしが作ったこのお守りをお渡しするためにやってきました。どうぞお受け取りください」
差し出された彼女の手の上には、アクセサリーとして、不思議な輝きを発するきれいな石が付けられている、ネックレスが乗せられていた。
「ありがとう。大切にしますよ。とてもきれいな石ですね」
そう言うとそっと彼女の手をやさしく握り、アモスはネックレスを受け取った。
「アモスさん…きっと…また帰ってきてくださいね」
「もちろん。あなたもお元気で!」
「さようなら…」
アモスが教会から出て行った後も彼女はそこからしばらく、動くことは無かった。

彼女の前から立ち去ったアモスのほうも、初めて会った彼女に気持ちが芽生えてしまったのか、ときめいてしまったようだ。
教会の外に居たロエルらと再び合流し、町の入り口へと進んで行った。町の入り口から町の景色を見渡す。

きっとまた帰ってくるよ、と澄んだ青空の下誓ったアモスだった。
そして彼の新しい旅が始まった。

 

 

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