DRAGON QUEST6外伝 モンストル英雄伝説9

 

 

ムドーを倒した勇者一行が、この町を後にして何日経ったのだろうか。モンストルの町から北の山までは彼らの足でも、5日は掛かるだろう。
しかし、スコットと神父、一部の住民にとっては彼らが理性の種を取って帰ってくることを心待ちにしていた。
彼らも毎晩怪物に変化して町で暴れているアモスを見てとても心が痛かったのだ。
アモスはアモスで彼らが旅立ってからも毎晩の怪物への変身による体力の衰弱がとても大きかったのだ。

体力以外にも毎晩襲われる"幻覚"により本人も精神的には限界に達し始めている頃だった。

その幻覚以外にも、昼間ふと睡魔に襲われたときには別の幻覚を見るようになってしまっていた。

そう、いつも寝床の横に置いている剣で、自分自身の首に…そこで目覚めてしまうのだ。

そして不思議なことに、刃が剥き出しになっている剣が横に落ちているのだ。

アモスはロエルたちがあの後から姿を見せなくなったので、すでにほかの町へと旅立ったのだと思っていた。

まさか自分のために北の山へ行ったとも知らずに。


 「おーい、アモス!飯もって来たぞ!!…?」
ちょうど昼ごろだった、スコットがいつもより遅れてアモスに昼食を持ってきた。いつもならアモスの返事が返ってくるのだが今日は返事が無い。
少し嫌な予感がしたスコットは駆け足でアモスの居ると思われる部屋まで走って言った。暖炉の火も少し消えかけていた。
「アモス!!」
そこには剣を持ち、無表情のまま立っているアモスが居たのだ。
「おい!!アモス!!何やってんだよ!?」
返事が無い。スコットが部屋に居ることが、解っていないのだろうか、表情が変わらないまま右手に持っている剣を首筋に当てた。

彼の目は命の無い人形のような目だった。
「おいっ!!」

バキッ!!

スコットの拳がアモスの左頬を直撃。その拍子で床に倒れこむアモス。その瞬間自分を取り戻したのか元の彼の目に戻った。
「いたたたた…何するんだよ!!痛いじゃないか!!」
「何をって…それはこっちの台詞だ!おまえ、何してるんだよ?剣なんかもっておまけに…」
アモスは自分が剣で首を切ろうとしていたことは解っていなかったようだ。スコットは今見たことをすべてアモスに話した。

本人もそれはなんとなく知っていたようだ。
「…やっぱり、わたしはこんなことをやってたんだね…」
「おまえ…まさか知りながらこれをやってたのか?」
「いや…これも夜見る幻覚と同じだと思い込んでて…昼間、たまに激しい睡魔に襲われることがあって…

その後、目覚めたら抜かれた剣が、下に落ちてるんだ…わたしは…

本当にもう駄目かも知れない…あの魔物に…心まで乗っ取られてしまって…そして」
「ば…馬鹿なことを…言うな!!」
そのあと、言葉が見つからなかったスコットは黙り込んでしまい、沈黙が続く。アモスは腰が痛むのか床に戻り横になった。
「…アモス、殴って悪かったな…」
「いいんだよ…わたしも悪いほうに考えてたさ。きみに殴られてなかったら今日は本当に…

この幻覚は昼間一回しか見ないから、今日はもう起こらないと思う。仕事に戻ってくれて構わないよ」
「ああ…」

 スコットはアモスのことを心配しながら仕事場である武器屋へと戻っていった。その途中、教会から一人の若い町娘が現れた。

彼女は笑顔でスコットに挨拶をした。
「スコットさん、こんにちは。アモスさんの状態は…」
「やあ、こんにちは。アモスは大丈夫だよ。きみのことは神父さんから聞いてるよ。毎日アモスの傷が治るように祈ってくれてるとか…」
「はい。アモスさんの傷が治るようにと…わたしにはこのようなことしかできませんが…神にこのことが通じればと思い…

アモスさんがあの日どのような思いでモンストラーと戦ったのかと思えば…あっ!嫌だ、わたしったら!では」
そう言うと彼女は少し顔を赤らめ、恥ずかしそうに足早に立ち去っていった。彼女はアモスに恋でもしているのであろうか。

スコットは少し微笑みながら仕事場へと戻っていった。

 

BACK NEXT