DRAGON QUEST6

新しい仲間1 〜出会い〜

 

 

 

「はーぁ…」

 

 

一人の少年が表情も暗く重い足取りで、レイドックの城を後にした。

入り口の大きな扉の横には城の監守の兵士が無表情のまま立っていた。この少年はあることがきっかけで、

ここから歩いて3日は掛かる、山奥の村であるライフコッドから、ここレイドックまでやって来た。

彼の名前はロエル。

 

ライフコッドの村長から、この城の城下町に入るための通行書をもらった。ここに来ればきっと、なにか手がかりが掴めるだろうと…

そして偶然この城で兵士の募集をしていた。何か身につくかもしれないということで、ロエルもこれに応募はしたのだが

残念ながら彼は兵士になることが出来なかった。

 

「あぁ…悔しかったなぁ…せっかく試練の塔まで行って帰ってきたと言うのに。ぼくよりも先に戻った人がいたなんて…

どうしよう…せっかくここまでやって来たのに…このまま村に帰るわけには…でもぼくが帰るところはあそこしかないし…」

 

ロエルの頭に中には、自分を送り出してくれた村長、村の人々、そして妹のターニアの顔が巡っていた。

彼は城の堀から、城を囲う城壁まで続く石畳の歩道を、ため息をつきながらゆっくりと重い足取りで歩いている。

 

彼には今まで住んでいた村には売っていない、武器や防具を見る気力も残っていなかった。

とうとう城壁入り口の、見張りの兵士が立っているところまでやってきてしまった。そしてもう用は無いと言う気持ちと、

悔しい気持ちを感じつつ城下町を後にした。

 

 

 

 

城下町を後にして、しばらくたってからロエルはふと空を見上げてみた。雲ひとつ無い青く澄んだ空だった。

空を見上げため息を吐いた後だった、後方から誰かの足音が聞こえる。それはかなりの速さで走っているようだった。

 

しかしロエルは気にもせず、足は重いながらもライフコッドへと向かっていた。

足音が大きくなってきてそれが自分を過ぎていこうとしたときだった。

 

 

 

ボンッ!

 

 

 

「よおっ!!よかった、まだ近くに居て…」

 

背中に小さな衝撃を覚えた。

とともに声が…なんだろうと振り返るとそこには、小麦色に焼けた筋肉で覆われた分厚い男の胸部…

 

そして上を見上げると、自分よりも頭一個分以上は背丈のある大きな男が、笑顔で自分の顔を見下ろしていたのだ。

笑顔だが顔は少し強面だ。どこかで見たような…

 

「あ…あなたは…?ぼぼぼ…ぼく…な…何か、し…しましたか?」

 

ロエルはいきなりこんな大男に声を掛けられたので、少しすくみ上がっている。

 

「おいおい…あなたはやめてくれ…そんなにビビらないでくれ…ふつうにしゃべってくれよ。

へへっ。あんた、さっき兵士募集の試験に受けて駄目だったんだろ?」

 

「え?…うん。そうだよ。だから家に帰るんだ。何も出来なかったから、あまり帰りたくは無いんだけどね」

 

「あんたには悪いけど、実は俺兵士になれたんだ」

 

「…ぼくに何か用事?お城の中に居なくて良いの?」

 

ロエルは、この男の言葉で少しムッとし色んな感情も混じってか、冷たい感じで彼に接していた。

男も少し困った表情を見せてはいたが、話を続けていた。

 

「そんなに、冷たくしないでくれよ。あんたにいい話持ってきたんだ。

実はさ、あの城下町でも色んな人が言ってたんだが、ここから西に行ったところに、暴れ馬が住んでる森があるそうなんだ。

そいつは旅の商人なんかにも被害がかなり出ていて…で、その馬を捕まえに行こうとかと思ってるんだ。

あんたが、城を後にする後姿を見てたら、居ても立ってもいられなくてよ…

でよ、一緒に馬を捕まえに行かないか?俺一人じゃきっと無理だ。そうすればきっとあんたもお城の兵士になれるかもしれないぜ!」

 

男のその言葉を聞き、暗かった気持ちが今日の空のようにと変化した。と、ともに彼に冷たくしてしまったことに心が痛む。

 

「え…本当に?良いの?」

 

「ああ!もちろんさ!そういえば、名前言ってなかったな。俺はハッサン、よろしくな!この世界を、ずっと旅してた武闘家だったんだけ

どそろそろ職に着こうかなと思ってたら、良い感じで兵士の募集があったからさ」

 

男の名前はハッサンと言うらしい。彼は手を差し出した。自分の手よりも二回りは大きさがある手のひら。

見た感じはとても怖い感じがしたが、心は優しくて頼りがいがありそうだ。

 

「ぼくの名前は、ロエル。よろしくね…それと、さっき冷たくしてごめんね…ついつい頭に血が上っちゃって…」

 

そういうとロエルも少し照れながら手を差し出し、二人はがっちりと固い握手を交わした。

 

「そんな事、気にすんなって!!へへっ、ロエルか!なかなかかっこいい良い名前じゃねぇか!」

 

「ハッサンの方こそ強そうな名前だね」

 

「なっ…!そんな事言われたら、て…照れちゃうじゃねぇかよ!い…行こうぜ!」

 

ハッサンは少し顔が赤くなっていた。かなりの照れ屋なのだろうか、ロエルを置いてゆくようなスピードで西のほうへと走っていった。

ロエルは駆け足で彼の後を追っていった。

 

「待ってよ!!ハッサン!!」

 

 

 

 

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