DRAGON QUEST6

新しい仲間3 〜暴れ馬の森へ〜

 

 

 

焚き火の火も下火になり、薪も全部炭になっていることだった。東の空もずいぶん明るくなっていた。

先ほどまで、起きていたロエルもいつの間にか眠ってしまっていた。

真夜中には見えていたはずの下限の月も、西の空の彼方へと消えてしまっていた。

空で確認できるのは一等星や弐等星などの明るい星だけ。日の出も近いのだろう。

ハッサンは朝の空の何とも言えない、深い青から、薄い青そして水色へのグラデーションに心を奪われていた。

朝焼けや夕焼けと言うものは何度見ても感動できるものだなと、ハッサンは思った。

 

「ふぁぁぁぁ…」

夜が明けてだいぶ時間が経ち、太陽もかなり上の方に昇ってきた頃、ロエルはようやく目を覚ました。

 

「起きたか?」

「あっ!そういえば、起きておくっていったのに寝てしまったみたい……」

「いいってことよ。そんなことでいちいち謝るなって。俺が起きておくって言ったじゃねぇかよ。

ったくよーおまえって、神経質なのか無神経なのかがまったく解んないぜ」

 

ロエルは寝てしまったことを気にしていたようだが、ハッサンは気にも留めていなかったようだ。

ちょっと申し訳無さそうに、座り込むロエル。目線は下の方向を向いていた。と、そこに、火で焼かれた一匹の魚が差し出される。

少し驚いたようなポカンとした顔で、ハッサンの顔を見る。ハッサンは笑顔だ。

 

「さっき湖で獲ってきたんだ。腹、減ってるだろ?そんな惚けたツラしねぇで、食えって。ん?俺の顔に何か付いてるか?」

「ううん。ハッサンってやさしいんだな〜って思って」

「へへっ。今日はいよいよ、暴れ馬を捕まえに行くんだから、腹いっぱいにして気合入れねぇとな!」

 

 

 

しばらくして二人は暴れ馬の森へと出発した。一晩を過ごした森を抜け、河と湖の境目に掛けられている大きな橋を渡り、

いよいよ暴れ馬がいると思われる、半島にやって来た。そこには広々とした砂地、遠くに暴れ馬の森らしき緑の影が見える。

東側には高い山脈がそびえ立ち、その前には低い岩石で出来た、山があった。

この砂地で、シールドこぞうやどくろあらいなどの魔物と遭遇したが、彼らも旅を始めたときよりも強くなっているので、

ロエルが装備しているブーメランとハッサンの棍棒による強烈な打撃で一網打尽にした。

その後、ようやく砂地を抜けた。下を見ると地面にようやく草が生え始めていた。そして西側には深い森があった。

 

「ハッサン、あれはなんだろ?」

「ん?あっ、何かの看板じゃねぇの?文字が書いてあるみたいだな」

 

二人は迷うことなく看板へと足を進める。人々に警告するような大きな文字でこう書いてあった。

 

 

『危険 暴れ馬に 注意!!』

 

 

「ここが、そうみたいだね」

「ああ、そうだな。行くぞ」

 

ハッサンはそう言うと、迷うことなく森の中へと足を進める。と同時にロエルも同じように進んでいった。

森の中は、二人が思っていたよりも木々は生い茂っては無く、少しすっきりとした感じがした。

木々の隙間から差し込む木漏れ日が、森の中を明るく照らしている。

二人は警戒しながら進んでいたが、この森の中に魔物は出現しなかった。

 

 

ガサッ ザザザッ…パカッ、パカッ…

 

 

物音とともに、馬の蹄が、地面を踏み鳴らす音が聞こえる。

そして二人の前に、鬣は緋色、体色は全く他の色が混じっていない真っ白な白馬が現れたのだ。

馬は木漏れ日により白く、光って見えた。

 

暴れ馬、馬の怪物とまで言われるには、あまりにもその顔や容姿は気品に満ちており、人々を襲うようには見えなかった。

それを見たとたん、二人は反射的に身構える。しかし馬は暴れるどころか、一目散に森の奥へと逃げてしまった。

 

「くそっ!あーもうっ!!逃げられたっ!!」

「あいつ、本当に暴れ馬なのか?にしては、俺たちを見たとたん逃げ出すし…ようし、気を取り直していくぞ!」

 

しばらく歩くと馬の姿が見えた。二人は気づかれないようにそっと近づき馬までの距離を縮めて行く。

馬までの距離は、大またで十歩というところだろうか。

 

「どうする、ハッサン?」

「よし、一気に飛び出して、ヤツを捕まえるぞ」

「了解」

二人は小声で、そう意見をあわせた後、目で合図をした。

 

ハッサンもロエルも強烈な勢いで馬へと駆け出す。しかし当たり前だが、足の速さに関しては馬のほうが何枚も上手だ。

またまた馬は奥へと逃げていってしまった。しかしこの先は、崖がそびえており、行き止まりのようだ。

 

「はぁはぁはぁ…だぁっ…ダメだぁ…ぼくらの足の速では、馬なんかに敵うわけ無いよ…」

「普通の捕まえ方じゃ…捕まんねぇ…くそ!ヤツに勝てる方法は…

そうだ!良い事思いついた!足では敵わねぇが、人数なら勝てるじゃねぇか!そう思わないか!?」

自信に満ちた顔で、言葉を続けるハッサン。額には汗が光っている。

 

「え?どういうこと?」

「おまえと俺、二手に分かれてヤツを挟み撃ちにする。で、あそこの崖の前の行き止まりに追い詰めて…

二人でドンだ!良い作戦だろ?」

「すごい!良い作戦だ!じゃあぼくは、東側から馬に近づくよ」

「おっしゃ!じゃあ俺は西から。がんばろうぜ!」

そう言うとハッサンは西側へと歩いていった。ロエルも東側から崖に近づく。森の中央部は少し盛り上がっており、

それが馬からの目隠しとなっている。

 

ロエルがしばらく歩くと、何百年も生きていると思われる大木の下に立っていた。その向こうにはさらさらとした馬の尾が見えた。

どうやら地面の草を食んでいるようだ。

西側を見ると、馬に見つからないよう、そっとハッサンが手を振り、馬の方へと指を示していた。どうやら突入の合図のようだ。

ロエルも同意の合図を送る。

再び勢い良く飛び出す二人。やはり馬はそれを見たとたん急いで逃げ出そうとするが、

前と後ろの二手から攻められていて、馬も混乱しているのか上手く逃げられない。

 

 

ヒヒヒーン!!!

 

 

「よしロエル!こいつをあの奥の方へ追い詰めるぞ!!」

「わかった!!」

ロエルとハッサンは崖前にある、少し奥まった空間へと馬を追い詰める。

そこの広さは、馬が二頭入れるか入れないかと言う狭い空間だった。馬も疲れたのか、息を切らしている。

馬もさすがに観念したのか、逃げ出そうとはしているが身動きが取れない。前足を地面に踏み鳴らしているだけだった。

馬の目には、自信に満ちた二人の若者が写っていた。

 

「ハッサン!!」

「おうっ!観念しろ!もう逃げ場は無いぜ!」

二人は再び目で合図を交わし、声を合わせた。

 

 

“いっせーのー……でっ!!”

 

 

ドンッ!!

 

ヒヒヒーン!!ブルルルッ!!!

 

 

白馬は挟み撃ちにあい、ロエルとハッサンに捕まってしまった。馬の尻辺りにハッサン、顔の下にロエルの顔が来る形になった。

二人は「馬が暴れられたらどうしよう」と言う不安に駆られたが馬は暴れるどころか、ロエルに鼻を摺り寄せていた。

ロエルもそっと首をなでてやる。まるで、信頼しあっているかのように。

 

「ふぅー…全く、世話の焼ける馬だぜ。凶暴じゃなくて良かった。おまけに不思議な馬だよなぁ。

なんだか、おまえがこいつをずっと飼っていたみたいにさ」

「村に牛はたくさんいたけど、馬はあまりいなかったからね…でもなんだか不思議な馬だな…昔からぼくのことを知っているみたい」

「だよな。それよさ、こいつに名前付けないか?」

「名前?でも、こいつぼくたちが飼う訳じゃないんだよ?」

「んなこと、気にすんな!名前があったほうが、きっとこいつも喜ぶさ…うーんと…えーと」

 

ハッサンは真剣な顔で、馬の名前を考えている。その間も馬は、ロエルの横でおとなしくしていた。

 

「ファルシオン!!!」

ロエルは、ビクリと肩を竦ませた。

 

「うわっ!なんだよぉ!いきなり大声出して…それもしかして、こいつの名前?」

「そうだ!!ファルシオン!!おまえも良い名前だと思うだろ!?なっ!」

「そ…そうだね…!でも、なんでそんなかっこいい名前が…」

「へへっ!思いつきさ!!俺の頭の中に急に浮かんできたんだ!強そうな名前ってことでよ!」

ハッサンは、少し強引で押し付け的な部分もあるが、ロエルは彼のその部分が結構気に入っているようだ。

 

馬もその名前が気に入ったのか、名付け親であるハッサンにも鼻を摺り寄せた。

「わ!くすぐったいな!へへへへっ!!おまえも気に入ってるんだな!!」

「きみは今日からファルシオンだって!あははっ、くすぐったいよー」

 

ブルルルルッ!ヒヒーン!

 

ファルシオンは不思議なことに二人に捕まえられた事を喜んでいるかのように、ロエルとハッサンの回りを

ぐるぐる駆け回っていた。

 

 

ハッサンはファルシオンをレイドック城にいた、老人からもらったと言う手綱に繋いだ。

そして暴れ馬の森を後にし、レイドックへと向かった。

その後、レイドックに着いた二人は、暴れ馬を捕まえたことが兵士長の目に留まり、

兵士になれなかったロエルもレイドック兵士となれたのだ。

 

その後ファルシオンは、大臣の厚意によりレイドックの立派な馬車とともに、旅をすることとなった。

暴れ馬と呼ばれていた、不思議な白馬ファルシオンは、彼らの冒険の友としてこれからの新しい日々を過ごすのだ。

 

 

 

****管理人よりあとがき****

ようやく終わりました本当は…一つで終わるSSのはずだったのに3つにもわたる短編になってしまいました…

SSってわたしには向いていないのかな…と思いつつ…

アモッさんの話だって11も有るし…毎日書いてたんですね。ブログにあれ。

ファルちゃんは普通の馬とは違う感じが出したかったんですが、明らか普通の馬ですね…

そしてハッサンのボケも書いてみたかったんです。『幻の駄石』と『ファルシオン!!!』と叫ぶところは自分的に、かなり気に入っています。

 

どうしてもハッサンと主人公が出会う場面書きたかったんです。でもなんか、わたしが書くととてつもなくヘボ文になりますね。

もっと表現とか色々考えないといけませんね…

6の小説書くとき主人公はやっぱりロエルって名前に固定します(すみません…これ以外だと自分的に、気持ち悪いんです)

公式で出てる小説は、ブクオフにて一ページくらいしか読んだこと無いし(中刊?)どんな性格かも知らないから自分の思っている、彼でやります。

というか主人公ってロエルって顔してませんか?(してない)

 

20070127 かあさん

 

 

 

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